10年という短い人生を懸命に生きた男の子。
男の子と一緒に過ごした日々はお友達の胸に刻まれ、楽しかった思い出は記憶の中にずっと残ります。
病と向き合いながら頑張った10年
ひまわりの花が咲き始める7月、男の子が長い闘病生活の末、息を引き取りました。目が大きい可愛い男の子。小学5年生でした。男の子は生まれた時から大病を患い、入退院を繰り返しながら、何度も手術をうけ治療を乗り越えてきました。闘病しながら学校ではたくさんのお友達と共に過ごし、運動会など季節のイベントも楽しみながら参加していました。
家族や周りの方に支えられ在宅医療のケアを受けながら、大好きだった自宅で家族に見守られ最期の時を迎えました。
担当者の片桐さんは、花屋さんや映像関係の方々など男の子の葬儀に関わる全ての人々に病と戦い続けてきた男の子とご家族の背景や気持ちを共有しました。
「このご家族のために何ができるのか」
「この男の子のためにできる限りのことをしてあげたい」と全員が気持ちを一つにして心に残るお別れを実現しました。
きかんしゃトーマスと一緒に
緑が生い茂る山々の周りに、黄色や橙色の色とりどりの明るい季節の花が咲き誇る中、トーマスの仲間たちが線路の上を飛び出し自由に走る風景が会場に広がります。男の子が一番大好きだったトーマスに乗って、いつも遊んでいた「きかんしゃトーマスの世界」に旅立てるような男の子らしさを大事にした祭壇にしました。
それぞれのお別れの時間を
今まで支えてくれた方々に感謝を伝え、男の子と最期の時間をゆっくり過ごしてもらうために御通夜は時間帯をずらして二部制で執り行われました。
最初のお別れ会には男の子のお友達がたくさん会いにきてくれました。
受付には男の子へメッセージを書き込める場所を作りました。
男の子との別れを文字にすることは、男の子が天国に旅立ったことを少しずつお友達が受けいれるための悲しくもかけがえのない時間でした。
そして男の子がお友達と最期に楽しい時間を過ごせるように、きかんしゃトーマスのシールを用意してみんなで棺へ貼ってもらうことにしました。
トーマスに乗って迷わず天国に行けるように優しい想いがたくさん詰まったトーマスの棺をみんなで作り上げます。
夜には親族の方々が男の子と別れの時間を過ごしました。僧侶による読経と焼香を行い、厳かな中にも和やかな雰囲気に満たされた中、男の子を偲び、別れを惜しみました。
ひまわりのような笑顔
会場にはたくさんの写真とおもちゃが飾られ、モニターから流れるスライドショーには生まれた時からの懐かしい写真が映し出されます。皆が足をとめ、男の子と過ごした日々を振り返りました。
スライドショーの最後には家族でカラオケに行った時の動画が流れました。男の子の懐かしい声が聞こえると、会場は笑顔と涙で溢れました。
男の子とご家族が病気と向き合い精一杯生きたことで、命の大切を教えてもらいました。
これまで関わってきた全ての人の心の中で男の子は今もひまわりのような明るい笑顔を振りまいています。
【担当者からの一言/片桐さん】「お世話になった方々へ感謝を伝える時間を作りたい」ご家族の想いが痛いほど私に伝わってきました。お寺様による読経とお別れ会を分けて二部制にすることで実現いたしました。参列に訪れた方々の目には涙が溢れ、でも笑顔の花も咲くお別れの空間は理想の葬儀に思えます。ご家族の想いを形にすることが我々、葬儀社の役割です。決して、祭壇やお棺を売ることが仕事ではありません。その方の生きた証が記憶に残るように、最後のセレモニーをご家族と一緒に創り上げていきたいと考えております。
【取材後記】担当の片桐さんは、男の子とご家族が少しでも長く過ごせるように火葬まで二週間の時間をつくることを提案されたそうです。ご家族の心の奥にある想いや希望を汲み取り大切にして創り上げたお別れの時間に葬儀に関わった全ての方々のあたたかい想いが詰まっているのを深く感じました。