「故人が大好きだったあの曲で、安らかに送り出してあげたい」
「形式ばったお葬式ではなく、もっとその人らしい温かいお別れの会にしたい」
大切な方との最後のお別れを考えるとき、多くの方がこのように願います。
終活の一環としても注目されているのが、音楽を捧げる「献奏（けんそう）」です。
終活で考える「お別れのかたち」
終活では、エンディングノートに「葬儀は家族葬にしたい」「お墓は樹木葬に」などと希望を残す方が増えています。その中で近年少しずつ広がっているのが「どんな音楽に見送られたいか」という視点です。
音楽は、人の心を瞬時にその時代や思い出へと引き戻します。
自分の好きな曲、家族と共有した曲を最後に流してもらうことで、「その人らしさ」を象徴する温かな空間を作り出すことができます。
献奏とは？故人へ音楽を捧げる特別な儀式
献奏は、神仏や故人に対して敬意や追悼の想いを込めて音楽を演奏すること。
単にCDを流すのではなく、生演奏として捧げられることも多く、心に深く響く時間を生み出します。
葬儀では献花・献灯と並んで行われることもあり、「音楽」という形のない贈り物を届けることで、故人と参列者をつなぐ大切な役割を果たします。
終活の中で献奏を準備するメリット
1.希望を残すことで家族の迷いを減らせる
「あの曲を流してほしい」とエンディングノートに残すことで、遺族は選曲に迷わずにすみます。
2.お別れが「思い出を分かち合う時間」になる
故人が口ずさんでいた歌や思い出の曲を共有することで、悲しみだけでなく温かい記憶が会場に広がります。
3.人生観を象徴する演出になる
静かなクラシックで厳粛に送るのか、明るい曲で「ありがとう」を伝えるのか。音楽には人生観が表れるため、「その人らしさ」を強く感じさせます。
終活で考えておきたい具体的な準備
・誰に演奏してもらうか
遺族・友人が演奏するのか、プロに依頼するのか。
・どの曲を選ぶか
好きだった曲や思い出の曲を候補に、式場の雰囲気に合うかも考えましょう。
・会場での制約や宗教上の確認
楽器演奏が許されるか、菩提寺に相談が必要かを事前に確認しておくことも大切です。
終活を通じて「想いを音楽でつなぐ」
終活は「死の準備」ではなく、「生きた証をどう残すか」を考える活動です。音楽を通じた献奏は、まさにその象徴ともいえる方法。
「この曲を聴けば、あの人を思い出す」――そんな瞬間を遺してあげられるのは、何よりの供養であり、遺族への大きな支えにもなります。
終活を進める中で、式場や費用といった現実的な準備だけでなく、「どんな音楽で見送られたいか」を考えることは、ご自身の人生をより深く振り返るきっかけにもなります。
献奏は特別な知識や経験がなくても準備できます。まずはエンディングノートに「自分の好きな曲」を書き残すところから始めてみてはいかがでしょうか。
