
想いのはじまりは、ホテルから
今回お話を伺ったのは、2021年創業「株式会社葬援(家族葬のそうえん)」の佐藤さんです。創業当初から代表の荻島さんとともに葬援を支えてきました。「葬援」という名には、「葬儀を望む人を全力で応援し、支援したい」という願いが込められています。
代表の荻島さんは、もともと帝国ホテルで長年ホスピタリティの最前線に立ち続けてきました。ブライダル業界が縮小傾向にある中で次のステージを模索していた時、出会ったのが葬儀の世界でした。ホテルでは当たり前のように大切にされていた“ホスピタリティ”が、葬儀の現場では思いのほか見られなかったのです。
「お客様に寄り添うという点で、もっとできるはずなのに…。」そう感じた瞬間が、強く心に残りました。
ホテルでの経験を活かせば、もっと心に残る葬儀ができる——そんな思いが芽生え、やがて創業のきっかけへと繋がっていきます。
「送りたいのに、送れない」悔しさから生まれた決意
決定的だったのは、コロナ禍での出来事でした。
感染リスクを理由に、多くの葬儀が制限され、火葬のみの対応、あるいは葬儀そのものを断られるケースも少なくありませんでした。代表の荻島さんは、「遺体感染管理士」の資格を持っており、正しい知識と手順を踏めば、コロナ感染者であってもご家族とのお別れが可能であることを理解していました。ただ、現場ではその理解が得られず、ひとりで葬儀に向き合わなければならない状況に、限界を感じていたそうです。しかも当時は、火葬場には家族が立ち会えない、という制限もありました。だからこそ、せめて葬儀の場だけでも設けて、お花を手向けていただき、ご家族が納得してお別れできる時間を届けたい。最期にきちんと送り出すことを諦めて欲しくない。
それならば、自分で会社を立ち上げて、やりたいことを実現できる体制をつくろう。その想いが、「葬援」創業の大きな原動力となりました。

創業当初は近隣からの相談が中心でしたが、ホームページに「コロナ禍でもお別れの場を提供します」とご案内していたことにより、情報を見つけたご遺族からの問い合わせが寄せられました。「他では断られたけれど、ここなら…」と、遠方から訪れる方も少なくなかったといいます。
生花も、納棺も、心を込めて自分たちの手で
コロナが落ち着きはじめた頃、次なる展開として「生花チーム」と「納棺チーム」の立ち上げを決意します。
通常は外注することが多いのですが、スタッフ自らが市場で新鮮なお花を仕入れ、ご家族のご希望にあわせて柔軟に対応できるようにしています。納棺も、時間に追われる形式的なものではなくの、ご家族としっかり対話しながら、丁寧な納棺の儀を行う体制を整えています。
この細やかな取り組みは、他社との差別化につながり、「本当に満足できる葬儀を探している」というご家族から高い支持を得ています。
この道を選んだ理由
佐藤さんは、もともとは葬儀社で働いていたのではなく、外部から葬儀のサポート業務に関わっていたそうです。自分の働きかけが誰かの役に立ったり“お願いしてよかった”と言っていただけたりすることに、やりがいを感じていました。でも以前は限られた立場でしか動けなかったので、「もっとこうして差し上げたい」「もっと寄り添いたいのに、それができない」というもどかしさを感じ続けていました。
そんなとき、荻島さんから「もっとやったらいいじゃん、一緒にやろう」と声をかけられたことが、転機になりました。「荻島から声をかけられて、すごくうれしかったです。」と笑顔で話してくださりました。
葬援の立ち上げに関わり、今ではチームの中心として活躍している佐藤さん。現在、葬援には生花チーム、納棺チームを含め18名のスタッフが在籍し、「葬援」のホスピタリティを形にしています。葬儀という人生の節目に向き合う時間を、少しでも安心して過ごせるよう、全員で心を込めたサポートを提供しています。

想いに応える場所でありたい
葬儀という時間は、決してやり直しのきかない、たった一度の時間です。だからこそ、そのひとときをどう過ごすかは、ご遺族のこれからの心に大きく影響を与えるものでもあります。
佐藤さんをはじめとした葬援のスタッフたちは、一人ひとりの「こうしてあげたい」という想いに真っ直ぐに向き合いながら、その最期の時間を、あたたかく、丁寧に形にし続けています。
“想いに応える”ことは、決して特別なことではないのかもしれません。
けれど、それを一つひとつ実現していくには、誠実さと情熱、そして何より人に寄り添う“ホスピタリティの心”が欠かせないのだと、私たちは信じています。

株式会社 葬援
〒191-0052
東京都日野市東豊田4−17−3
TEL:042−506−2300
【取材後記】ホテルで培ったホスピタリティを葬儀の現場に活かしたいという想いと、コロナ禍で「送りたくても送れない」現実に立ち向かった決意。その原点に共感し、ともに歩んできた佐藤さんの言葉からは、ご遺族一人ひとりに真摯に向き合ってきた姿勢が伝わってきました。生花や納棺まで手がけるのは、形式ではなく“心で送る”という想いのあらわれです。誰かの想いにそっと寄り添う、その静かな強さが、葬援という葬儀社の本質なのだと感じました。
