株式会社愛和セレモニー事業部 原さんにインタビュー

介護から葬祭へ――「人を支える」を原点に歩んできた企業、愛和

今回取材したのは、湯灌・納棺を中心にセレモニー事業を手がける株式会社愛和の原さんです。

愛和の創業は昭和58年(1983年)。
最初は布団乾燥やジュウタンクリーニングを主とする会社でした。転機となったのは、行政の委託を受けて行っていた「寝たきり高齢者宅への布団乾燥サービス」。その現場で「布団は綺麗になっても、お風呂に入れてあげられないのがつらい」というご家族の声が数多く寄せられたことでした。

それを受け、訪問入浴サービスを開始。寝たきりの高齢者にお風呂に入る喜びを届ける活動は、次第に介護事業へと発展し、やがてそのご利用者が亡くなられるケースも増える中で、「最期に何かできることはないか」という想いから、セレモニー事業=湯灌・納棺の世界へと歩みを進めていきました。

会社名の「愛和」には、「愛情」と「平和」への願いが込められています。
現在では、高齢者福祉にとどまらず、障害を持つ子どもたちへの療育、障害福祉、ペットケア事業、そして納棺・搬送を含む葬祭関連事業まで、多岐にわたる領域で人に寄り添うサービスを展開しています。

最初のきっかけは、大切な人への“約束”

そんな愛和で納棺師として活躍しているのが、原さんです。
原さんがこの業界に入ったのは今から12年前。
当初は営業職として葬儀社に勤務していましたが、本来目指していたのは葬祭部。異動を希望していたものの、上司からは「営業向きだから」とそのまま営業を続けるよう言われたといいます。

そんなとき、一緒に営業をしていた同僚から「原さん、納棺師に向いてそうだよね」という言葉をかけられたことが転機になりました。

実は原さんが葬祭業に関心を持った原点には、ある後悔がありました。
生前にとてもお世話になった方が亡くなった際、その棺に「私、こうやって頑張っていきます」と綴った手紙を入れたものの、その約束を果たせなかったという心残り。その想いが忘れられず、「この気持ちを忘れたくない」という一心で、納棺の道へ進むことを決意しました。

母との約束と、納棺師としての覚悟

やっていてよかったと思える瞬間はたくさんありますが、母を自分の手で納棺した時が、一番強くそう思いました。

原さんのお母様は、原さんが納棺師になると決めた時、「私を練習台にしなさい」と笑顔で言ってくれたそうです。そして実際に、お母様が亡くなったその日、現場に出る直前に危篤の連絡が来たものの、「お母さんなら“行きなさい”って言う」と現場を優先。その後、自らの手でお母様の湯灌と納棺を行った原さん。この仕事をしていて本当に良かったと心から思えた瞬間でした。

自己満足ではなく、ご家族の納得を引き出す納棺を

納棺の仕事で大切にしているのは、ご家族とのコミュニケーションだと原さんは語ります。
どんなにきれいに整えても、「お父さんらしくない」って言われてしまったら意味がないんです。
ご家族が“らしい”と感じることが一番大事。だから、ご家族の心に寄り添って何を望んでいるのかを丁寧に引き出すことを心がけています。
マニュアルではなく、「今このご家族に何ができるか」を一つひとつ考える。それが私の仕事です。

原さんは、ご家族の想いを形にするための柔軟な対応にも尽力してきました。
ある葬儀社様から、剣道の師範をしていた方が亡くなられたのですが、愛和さんならきっとふさわしい綿衣装を作ってくれるんじゃないかと相談がありました。
通常、湯灌後に施す綿衣装は、男性であれば羽織袴風、女性であれば白無垢風に整えるのが基本ですが、剣道の師範を務めていた故人のために、綿衣装を剣道着風に仕立てたそうです。
愛和さんならやってくれるよねという信頼に応えたい、それが原さんの原動力です。

湯灌・納棺から搬送まで、一貫して対応できる強み

原さんは納棺だけでなく、搬送業務の立ち上げにも尽力。
24時間対応という厳しい条件の中、制度や設備、人員体制を整え、納棺師が搬送にも携わることで、よりスムーズで的確な対応が可能になりました。

状態に応じて「ドライアイスは何キロ必要です」といったアドバイスもできます。
現場を知っている納棺師が搬送を行うからこそ、搬送中に故人の状態を確認して適切な処置や助言を行えることも、他社にはない強みです。

社会全体を支える「愛和」の理念

愛和では、社内で共有している理念として「人々の未来を支え、超高齢化社会の日本を元気にする」ことを掲げています。セレモニー事業だけでなく、介護や障害福祉、発達障害児の療育支援など、幅広い領域でサービスを展開しており、高齢者だけでなくそのご家族、そして次世代を担う子どもたちまで、多様な世代への支援を通じて社会全体を元気にしていくことを目指しています。

介護サービスを通じてご家族が安心して社会に出られる環境を整えたり、障害を持つ子どもたちが希望を持って成長できるようサポートしたりと、日々の取り組みの先には“地域と未来を支える”という強い想いがあります。

セレモニー事業においても、ただ故人を見送るだけでなく、ご家族が前を向いて生きていけるような、心残りのないお別れの時間を提供することに力を注いでいます。それは単なるサービスの提供を超え、人生の節目に寄り添う温かな支援。全事業に通底するこの思いこそが、愛和という会社を形づくる本質なのです。

取材協力

株式会社愛和 セレモニー事業部
〒124-0021 東京都葛飾区細⽥4-31-16
TEL:03-5876-7330

【取材後記】取材を通じて強く感じたのは、会社が掲げる「人々の未来を支え、超高齢化社会の日本を元気にする」という理念が、現場の一つひとつの仕事にまでしっかりと根付いていることでした。技術だけでなく心で納棺に向き合う姿勢が印象的で、ご家族や故人様に対するまなざしに、プロとしての覚悟と温かさがにじんでいました。

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