
創業者の想いを継いで
今回お話を伺ったのは、「株式会社日典」常務執行役員の「内田将章さん」です。
創業は1979年(昭和54年)。創業者は、かつて都内の複数の葬儀会社でNo.2の立場として現場を支え、その後、地元三鷹で独立開業しました。現在は、その意思を受け継いだ創業者の長男が社長として舵を取り、地域に密着した運営を続けています。

創業者は、幼少期から18歳までをフィリピンのダバオで過ごし、戦争も経験。現地での生活を通じて、貧困や社会的に弱い立場の人々に対する思いやりを強く抱くようになりました。帰国後もその精神は変わらず、日本で葬祭事業を始めてからも、生活保護を受けている方の葬儀に積極的に対応したり、フィリピンへの支援活動を続けたりと、「人に尽くす」姿勢を貫いてきました。今もその志は受け継がれ、フィリピンでのバザー開催や物資支援などのボランティア活動が続いています。
すべての人に、お見送りの場を
三鷹市で生活保護葬に対応していた葬儀社は、かつてこの会社だけだったといいます。
現在では5社に増えましたが、「誰にでも必要な儀式だからこそ、経済状況にかかわらず対応する」という創業者の方針は、当時としても画期的でした。
「祖父の時代には200~300万円をかける葬儀が当たり前でしたが、10万円や20万円の葬儀でも“そんなの関係ないよ”と請け負っていたと聞いています。」
内田さんはそう語り、「その精神をこれからも大切にしたい」と静かに語ってくださいました。
寄り添いと選択肢を
地域密着型の同社では、一人の担当者が最初から最後まで伴走するスタイルを基本としています。「経済的に厳しいご事情がある方にも、無理なくできるお別れを提案することが大切」と。無宗教のお別れ会など、形式にとらわれない提案も柔軟に行っています。


「葬儀って、何を聞けばいいのかわからないもの。だからこそ、こちらから一方的に押し付けるのではなく、“選べるようにすること”が大切だと思っています。」営業トークではなく、”伴走者”としての姿勢。それが同社の信頼を支える原点です。
祖父の背中を追って選んだ道
内田さんがこの道に進んだのは、祖父の存在がきっかけでした。晩年、体が弱り介護が必要になっていく中で、家族として寄り添った日々。その経験を通じて、「家族の近くで、祖父の願いを形にできたら」という想いが芽生えたと言います。
現在11年目。変化の激しい時代の中でも「真心」や「誠意」といった人としての軸は変わらずにいたいと話します。「葬儀は、ご家族にとって一度きりの大切な時間。小さい式、大きい式という区別は関係ありません。希望を形にするために、できる最善を尽くす。それが私たちの仕事です。」
「ありがとう」の言葉が何よりの喜び
この仕事のやりがいについて尋ねると「やっぱり“ありがとう”の言葉ですね。そして、後日も何かあればご相談いただけること。紹介でご縁が広がること。それは信頼していただいている証拠ですし、人と人がつながっていく喜びでもあります。」と笑顔で答えます。
形式にとらわれず、一人ひとりの想いに応え続ける姿勢。そこには、創業者から脈々と受け継がれた“人に尽くす”という精神が、今も確かに息づいていました。
株式会社日典
〒181-0014
東京都三鷹市野崎2-5-5
TEL:0120-245-210
【取材後記】葬儀というと、形式や費用に目が向きがちですが、その本質は“人に寄り添うこと”にあるのだと改めて感じさせていただきました。
どんなに小さな式でも、どんなに限られた予算でも、故人とご遺族の想いを大切にする——そんな姿勢が、この葬儀社の根幹には流れていました。
