
心に寄り添う時間
大切な人やペットとの別れ。
どんなに時が経っても、ふとした瞬間に心を締めつけられるような悲しみに襲われることがあります。
Letter Flower は、そんな心の痛みをそっと包み込むグリーフケアとヒプノセラピーを提供しているセラピスト・あやはなさん(石井文華さん)の活動です。
話すことで心を癒し、深層心理にアクセスすることで本質的な回復へと導く——。ご自身の深い悲しみの経験をもとに、この道を選ばれたあやはなさんに、活動への想いや取り組みについてお話を伺いました。
悲しみに寄り添う「グリーフケア」
あやはなさんが提供するグリーフケアは、「大切な存在を失った人の悲しみに寄り添うこと」が原点です。
対象は人だけでなく、ペットとの別れによる“ペットロス”も含まれています。
時間とともに癒えていく方もいらっしゃいますが、いつまでも悲しみや苦しみを抱えたままの方も少なくありません。誰にも言えず、心の奥に感情を押し込めている方に、安心して想いを語れる場を提供したいんです。
グリーフケアとは、亡くなった方との思い出や想いを誰かに“語る”ことで、自分の中の気持ちと向き合い、少しずつ整理していくプロセス。話すことで癒されることもあれば、気づかされることもあります。
ただ、あやはなさんはこうも語ります。
語るだけでは、癒しきれない部分もあります。何年も悲しみを抱えている方には、心の“もっと深い場所”に未解決の感情が残っていることが多いんです。
その“深い場所”に働きかける手法として、あやはなさんはヒプノセラピーを組み合わせたケアを行っています。

15年の苦しみを癒したヒプノセラピーとの出会い
あやはなさんがこの道を選ばれたきっかけは、20代の頃に実のお兄様を突然亡くされたご経験でした。
周囲に同じような体験をした方もおらず、職場でも友人の前でも気持ちを打ち明けることができないまま、15年以上の歳月が過ぎていったそうです。
そんな中で出会ったのが、一冊の本『前世療法』でした。それをきっかけにヒプノセラピーという心理療法を知り、実際にセッションを受けてみたところ、長年抱えていた悲しみが一度のセッションで大きく和らいだのです。
この体験を通じて、「自分も誰かの力になりたい」と思うようになり、会社を退職してセラピストの道へ進まれました。そして2023年には、グリーフ専門のセラピー「Letter Flower」を立ち上げられました。

ヒプノセラピーとは?
「ヒプノセラピー」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、日本語では「催眠療法」と訳される心理療法です。
催眠術のようなイメージを持たれがちですが、実際は全く異なり、脳をリラックス状態へと導くことで、普段はアクセスできない心の奥深くにある感情や記憶に触れることができます。
セッションはおよそ3時間で、前半の1時間ほどは丁寧なカウンセリングを行い、現在のお悩みや心の状態を共有していただきます。その後、催眠状態に入り、心の深層と向き合っていく時間へと移っていきます。
現在は全国対応でオンラインセッションも行っており、ご自宅で安心して受けられるという利点もあります。

「話すこと」と「癒すこと」を両立する唯一の存在
あやはなさんの大きな強みは、グリーフケアとヒプノセラピーの両方を提供できることにあります。
グリーフケアを行うカウンセラーや、ヒプノセラピーを扱うセラピストは多数いますが、「死別の悲しみに特化したヒプノセラピー」を提供している方は、数少ないです。
語ることで感情を整理し、催眠療法で心の深い部分に触れる。この“ふたつの癒しのアプローチ”を組み合わせることで、長年抱えてきた悲しみにも優しく、確実に向き合うことができるのです。
名前に込められた想い
Letter Flower という名前には、あやはなさんのお名前である「文華(あやか)」の意味が込められています。
亡くなった方へ手紙を書いても届けることはできませんが、空を見上げながら心の中で語りかけるようなことは誰にでもあるはず。そうした“心の手紙”をお花と一緒に届けたい、という優しい気持ちから、この名前が生まれました。

寄り添いの姿勢とセッションのやりがい
セッションの中で大切にされているのは、「励まさない」「アドバイスしない」「否定しない」という3つの姿勢です。
落ち込んでいるときに「元気を出して」と言われても、元気になれないこともあります。そんなときは「つらいね」と言ってくれる存在のほうが、心に寄り添ってくれます。
ヒプノセラピーでは、答えはお客様の中にあるという考え方が基本です。セラピストの導きにより、その答えへ辿り着き、自然と自分自身の言葉で気づきを得る。そのプロセスを丁寧に支えることが、あやはなさんの役割となっています。
セッションの終わりに見せる笑顔や、すっきりとした表情に出会えることが、あやはなさんにとって何よりのやりがいだといいます。
線香づくりから始まる癒しの入り口
グリーフケアやヒプノセラピーを知らない方にも、癒しのきっかけを届けたいという想いから、香司でもあるあやはなさんは「手作りお線香ワークショップ」も開催されています。
参加者の中には、ワークショップを通じて初めて“グリーフ”という言葉を知る方も多く、故人を想う気持ちが、自分自身の癒しにつながっていく貴重な体験となっています。
あやはなさんは、今後の目標として「死や喪失についてもっと自然に語れる社会をつくること」を挙げています。日本では“死”について話すことがタブー視されがちですが、誰もが避けては通れないテーマであり、もっと早い段階から向き合える場が必要だと考えています。
将来的には、学校教育の中にもグリーフケアを学ぶ機会が取り入れられ、誰もがグリーフケアを知っている社会になってほしいという想いも抱いていらっしゃいます。
オンライン/東京/横浜
ホームページ:https://letterflower-hypno.com
e-mail:info@letterflower-hypno.com
【取材後記】
石井さんのお話を伺いながら、私自身も過去の別れや感情に思いを重ねていました。心の奥に残る悲しみと、どう向き合っていくか——。
自分の気持ちに正直になれる場所があることは、何よりも安心につながるのだと感じました。グリーフケアとヒプノセラピーが、もっと多くの人に届いてほしいと思います。
