近年、亡くなった人を思って心の痛みを感じたり、悲しみが急にこみ上げたりする「悲嘆」が長引く人が増えています。こうした心の痛みや苦しみを癒す「グリーフケア」が注目を集めています。
本コラムでは、「グリーフケア」について詳しくご紹介します。
「グリーフ」「グリーフケア」とは
「グリーフ（Grief 悲嘆）」とは、家族や愛する人との死別で生じる心の痛みや喪失感を指します。
これは誰にでも起こる自然な反応ですが、時にはその悲しみが長期間続き、生活に支障をきたすこともあります。
「グリーフケア（Grief Care）」とは、このような状況にある人の悲しみに寄り添い、日常を取り戻せるように支援することを指します。
心理学者エリザベス・キューブラー・ロスの「死の受容の5段階モデル」によると、喪失を経験した人は以下の段階を経ると言われています。
- 否認（Denial） –「こんなことが起こるはずがない」と現実を受け入れられない
- 怒り（Anger） –「なぜ自分がこんな目に？」と怒りを感じる
- 取引（Bargaining） –「もし〇〇だったら、助かったかもしれない」と考える
- 抑うつ（Depression） – 深い悲しみに襲われ、無気力になる
- 受容（Acceptance） – 徐々に現実を受け入れ、新たな生活を歩み始める
ただし、これらの段階は必ずしも順番に進むわけではなく、人によって異なります。グリーフケアでは、こうした過程を理解しながら、遺族の心に寄り添い、支援することが求められます。
グリーフケアが必要とされる背
近年、グリーフケアの重要性が高まっています。その背景には、社会の変化が大きく関係しています。
核家族化の進行
昔は大家族が一般的で、親族が協力して支え合いながら喪失の悲しみを乗り越えていました。しかし、現代では家族の人数が減少し、遠方に住む親族との交流が減ったことで、一人で悲しみを抱え込む人が増えています。
高齢化
高齢化の進展により、親しい友人や知人が次々と亡くなることで、孤独感が増し、喪失の痛みが長引くケースが増えています。
生活と「死」の分断
かつては家庭で最期を迎えることが一般的でしたが、医療の発展により病院で亡くなるケースが増え、死と向き合う機会が減少しました。これにより、遺族が喪失をどう受け止めればよいかわからないという課題が生じています。
葬儀の簡素化
近年、家族葬や直葬が増加し、故人を偲ぶ場が限られるようになりました。その結果、故人をよく知る人との交流が減り、悲しみを共有する機会が失われています。
